佐高さんと田原さんは犬猿(倦厭)の仲であるらしい。
先に、当方ブログ(4・4)に記したが、
佐高さんは、岩見隆夫さんから、〈ジャーナリストに退場はないにもかかわらず、田原総一郎さんに「退場勧告」をするのは「異様」であり、「言論封殺」につながりかねない・・〉という苦言を受けた。それに対し、佐高さんが、即、次号(4・27)『政経外科』で答えた。
(『サンデー毎日』が、手もとになく、記憶に頼って書いています。正確なところは、どうぞ4・27号を。)
佐高さんの言い分によると、かつて、田原さんと一緒にテレビ出演して論じ合う機会が予定されてあったとき、田原さんは、佐高さん個人を嫌って、論議する機会を回避し、テレビ局に圧力をかけるなどして、出演できないように追い込んだことがあるのだそうである。
佐高さんは、それほどまでに田原さんが高慢になっており、退場宣告どころか、事実上、他者に退場を強いてきたのは田原さんであり、『朝まで生テレビ』の司会の仕方も、いわば「言論封殺」であるというように記していた。
当方も、『朝まで・・』をチラと見たことがあるが、アレの印象は、体力勝負の格闘技番組にちかく思え、火花が散るばかりで、建設的な議論がなされているようには感じられなかった。
たった一回のことなので、短絡的判断であると叱られそうだが、それ以来見ることもないし、見ようとも思わない。
しかし、そのような深夜の番組をたいへんな数こなしてこられたということを考えると、田原さんの体力は尋常並外れたもので畏敬すべきものではあろうけれど、田原さんには、それ以上の評価も、また、それ以下の評価も当方にはできない。
虚心坦懐にその主張や論議にまずは耳を傾け、その著作を拝読しなければならないのだろうけれど、そうしようという気がなんとなく起こらない。
ジャーナリストとはいうものの、田原さんには、なんとなく、胡散臭さを感じてしまうからかもしれない。
(その点、政治家というより芸能人に近く感じられる小泉純一郎元首相と似ているようにも思える。「政治家:ステイツマンではなく、政治屋:ポリティシャンだ」という言いまわしがあるが、それに倣うなら、田原さんは「ジャーナリストというより、瓦版屋だ」といった感じといえるようにも思う・・)
きっと、権力と大衆に媚びているという“印象”が、敬意をそぐものとなっているようにも思える。
しかし、それは岩見さんに言わせると、ジャーナリストの(権力に対する)カケヒキの方法であって、好き嫌いはあろうけれど、一概に非とできないことであるとのことだ。
たぶん当方は、佐高さんと同じく、田原さんのやり方を好きではないということなのだろう。
しかし、実際嫌いとなると、(それではいけないのだろうけれど)嫌いな方へは、耳も目も向いていかなくなる。
丁度同じように、田原さんも、佐高さんが嫌いなのであろう。きっと、目も耳も向けたくないにちがいない。
しかし、それでも、相手の好き嫌いは別にして、論議すべき時は、きちんと論議すべきであろう。
佐高さんの言い分が“正しければ”、先述のとおり、田原さんは、佐高さんを嫌い、論議すべき時に論議せず、しかも、陰険な手段を用いて、佐高さんを排除しようとし、実際に排除したということであるから、田原さんこそ、「退場勧告・宣告」というジャーナリストにあるまじきことを口(筆)にするするどころか、筋チガイな仕方で、他者の言論の機会を奪う(こともある)「言論封殺」の徒ということになるにちがいない。
・・・ということで、当方は、ご両人が、ご自分のコラムを離れて、いわば「場外乱闘」を繰り広げ、ジャーナリズムについて論じあうのを楽しみにしていたのであるが、(犬猿の仲同士であるならなおさら、“理性の”牙をむいて、闘ったらさぞオモシロかろうと思ってもいるのだが)そもそも、田原さんは、佐高さんとの、論議を避ける方であるらしいので、それは、どだいムリということになるらしい。
話しはとつぜん変わる・・・
先日、NHKに『神聖喜劇』の著者大西巨人さんが出演して、コメントしていた。
戦時下、ご自分が配属された対馬の砲台を訪れたりされている様子も映しだされていた。高齢になられて足場の悪いところを歩かれるのはたいへんであったろう。
大西さんは、現在の時局について、満州事変のころのような感じがするとおっしゃっていた。言論に関してである。
当局が、言論弾圧を始める。報道機関が、自己規制を始める。国民は、権力の側の言い分しか見聞きできなくなる。国民は、正しい判断ができなくなる。
戦前(つまり、戦争開始前の空気を知る)大西さんは、日本の今の空気をそのように感じているということだ。
その発言をたいへん重く感じた。当方は、そこまでとは思っていなかっただけに、重く感じた。
言論と権力との関係に注目し、ジャーナリズムが健全かどうかは、社会のマトモさを量る指標になるようである。
大西さんの言葉を、腹に括っておきたい。
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